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盛子のお腹では、もう胎動がはじまつていた。
「よく来て下さいましたな。何しろ不便なところですから、途中が大変だつたでせう」
それが堂本だつた。
「うむ」
「なあんだ、まだ訴訟してるのか」
済んでもまだ、彼の顔は何かしら当惑した、おつかなびつくりといつた表情を浮かべていた。それは何だか、嫌な仕事をさせられた子供のよくやるやうな表情だつた。突然、盛子は了解した。そして、笑ひ出した。――このいかつい、頑丈な、むくむくした房一の中には、こんなに気の弱い、やさしい、何だか可愛げなものがあるのだつた。それは全く、彼には不似合なものだつた。それだけに、可笑をかしみのある、又親しい――。
喜作は、
ほんとにさうだ、忙しい身分なんだ、どうしてそこに気がつかなかつたらう、――と、徳次は瞬間本気にさう考へ、自分のはしたなさを悔くやんでいた。
「うむ」
「はあ、はあ」
「おつ!こりあいかん」
「まだつて、はじまつたばかりですよ」
「いや、これから往診に行くところだ」